世代をつなぐ会話術

年下部下から「考え」を引き出す効果的な質問の技術

Tags: 世代間コミュニケーション, 部下育成, 質問術, マネジメント, 中間管理職

はじめに

ビジネスの現場において、上司と部下とのコミュニケーションは、チームの成果や部下の成長に大きく影響します。特に、世代が異なる部下との間では、価値観や仕事の進め方に対する考え方の違いから、指示が一方的になったり、部下の本音が見えにくくなったりすることがあります。

年下の部下を持つ中間管理職の方々の中には、「部下が何を考えているのか分からない」「もっと自発的に動いてほしいが、どう関われば良いか分からない」「指示の意図がうまく伝わっているか不安」といった悩みをお持ちの方も少なくないかもしれません。このような状況を改善し、部下の主体性や能力を最大限に引き出すためには、「聞く力」、中でも「質問する力」が非常に重要になります。

本記事では、年下部下から「考え」や「本音」を効果的に引き出し、相互理解を深めるための質問の技術と、実践における注意点について解説します。

なぜ年下部下への「質問」が重要なのか

一方的な指示や命令だけでは、部下の思考停止を招き、言われたことだけをこなす「指示待ち」の姿勢を助長する可能性があります。特に、多様な情報に触れて育った若い世代は、自身の納得感や意義を見出せない業務に対して、モチベーションを維持しにくい傾向が見られます。

質問は、部下自身の言葉で考えを表現する機会を提供します。これにより、部下は与えられたタスクや状況について深く考察し、自身の意見やアイデアを持つようになります。これは、自律性や問題解決能力の向上に繋がります。

また、質問を通じて部下の考えや価値観を知ることは、世代間のギャップを理解し、埋めるための第一歩となります。上司が部下の内面に寄り添う姿勢を示すことで、部下は安心感(心理的安全性)を覚え、より率直に自身の状況や考えを話してくれるようになります。これは、より強固な信頼関係の構築にも寄与します。さらに、ハラスメントへの懸念から部下との対話に消極的になるケースも見られますが、相手の意見や考えを尊重する質問は、高圧的な態度とは一線を画すため、ハラスメントリスクを低減する効果も期待できます。

年下部下から「考え」を引き出す質問のコツ

効果的な質問には、いくつかのポイントがあります。

  1. オープンクエスチョンを活用する 「はい」か「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンではなく、「どのように」「何が」「なぜ」「具体的には」といった言葉で始まるオープンクエスチョンを使いましょう。「この件、終わった?」ではなく、「この件、現状はどうなっていますか?」「進める上で何か気になっていることはありますか?」と問うことで、部下は状況や課題、自身の考えなどを具体的に話しやすくなります。

  2. 「Why」を問う際は伝え方に配慮する 「なぜできなかったのか」という問い詰めのような「Why」は、部下を委縮させてしまう可能性があります。「なぜ」と問う場合は、「なぜそのように考えたのですか?」「なぜそのような方法を選んだのですか?」のように、相手の思考プロセスや選択の背景に関心を持つニュアンスで伝えましょう。あるいは、「今回の結果から、次回に活かせるとしたらどんな点があると思う?」のように、未来志向の質問に置き換えることも有効です。

  3. 具体的な状況に焦点を当てる 抽象的な質問よりも、「このタスクのこの部分について、どう進めるのが良いと思う?」「先日の会議の〇〇さんの発言について、どう感じた?」のように、具体的な状況や出来事に紐づけた質問の方が、部下は考えやすく、具体的な回答を得やすくなります。

  4. 相手の意見や感情を尊重する姿勢を示す 質問をする際は、部下の答えを頭ごなしに否定しない、最後まで耳を傾けるといった姿勢が不可欠です。部下が話し始めたら、相槌を打ったり、視線を合わせたりしながら、真摯に聞く姿勢を示しましょう。これにより、部下は「自分の意見には価値がある」と感じ、安心して話せるようになります。

  5. 沈黙を恐れず、待つ 質問をした後、すぐに部下からの応答がない場合でも、焦って次の質問を重ねたり、答えを言ってしまったりしないようにしましょう。特に若い世代の中には、熟考してから言葉を選ぶタイプもいます。数秒間の沈黙は、部下が自身の考えを整理するための貴重な時間です。じっと待つことも、効果的な質問の一部です。

  6. 相手の言葉を反復・要約する 部下の発言の要点を繰り返したり、「つまり、〇〇ということですね?」と要約して確認したりすることで、理解のずれを防ぐとともに、「きちんと聞いてもらえている」という安心感を部下に与えることができます。これは傾聴の技術と組み合わせることで、さらに効果を発揮します。

実践例:様々なシーンでの質問

質問する際の注意点

まとめ

年下部下から「考え」を引き出す質問の技術は、一方的な指示から脱却し、部下の主体性、成長、そしてチーム全体の活性化に不可欠なスキルです。効果的な質問は、部下の内省を促し、自身の意見を持つことを奨励し、結果として自律的な行動へと繋がります。

ご紹介したオープンクエスチョンの活用、Whyの適切な使い方、具体的な状況への焦点、そして何より相手の意見を尊重し、沈黙を恐れずに待つ姿勢は、世代を超えた信頼関係を築く上での強力なツールとなります。

今日からぜひ、部下とのコミュニケーションの中で意識的に「質問」を取り入れてみてください。あなたの「問いかけ」が、部下の新たな可能性を引き出し、より良いチーム作りに貢献することでしょう。